グリーンインフラ最新動向

グリーンインフラ推進における自治体内の部署間連携事例とその効果

Tags: グリーンインフラ, 自治体, 部署間連携, 組織体制, 事例

はじめに

グリーンインフラは、自然が持つ多様な機能をインフラとして活用し、持続可能な社会づくりを目指す概念です。この概念は、都市計画、防災、環境、農業、福祉、観光など多岐にわたる分野と関連しており、その推進には自治体内の様々な部署が連携することが不可欠となります。しかしながら、従来の行政組織における縦割りの構造は、部署間連携の障壁となる場合があります。本稿では、グリーンインフラを効果的に推進するために必要な部署間連携の重要性、具体的な連携の進め方、そして実際の連携事例とその効果について考察します。

部署間連携がグリーンインフラ推進に不可欠な理由

グリーンインフラが提供する機能は単一ではなく、複数の分野にまたがります。例えば、公園や緑地の整備は、都市の美観向上(都市計画)、ヒートアイランド現象の緩和(環境)、生物多様性の保全(環境)、住民の憩いの場提供(福祉)、災害時の避難場所(防災)といった多様な効果をもたらします。これらの効果を最大限に引き出し、相乗効果を生み出すためには、それぞれの機能に関わる部署(都市計画課、環境課、防災課、公園緑地課など)が連携し、共通の目標を持って取り組む必要があります。

部署間連携が進むことで、以下のようなメリットが期待できます。

連携を推進するための具体的なアプローチ

効果的な部署間連携を推進するためには、以下のようないくつかの具体的なアプローチが考えられます。

  1. 共通認識の醸成: グリーンインフラの概念、目的、そして自らの部署がどのように貢献できるかについて、職員間の共通認識を醸成することが重要です。部署横断的な研修会やワークショップ、情報交換会などを定期的に開催し、相互理解を深める機会を設けることが有効です。
  2. 横断的な推進体制の構築: グリーンインフラ推進に関する部署横断的な会議体やワーキンググループを設置し、定期的に情報共有、課題検討、意思決定を行う場を設けます。これにより、各部署の計画や取り組みが有機的に連携し、全体最適が図られます。
  3. 情報共有プラットフォームの構築: 関連部署間で共有すべき情報(計画、調査データ、事業進捗、課題など)を効率的に共有できる仕組み(例:共有データベース、オンラインツール)を整備します。
  4. 共通目標の設定と評価: 自治体全体として、あるいは特定のグリーンインフラ事業において、部署横断的な共通目標を設定し、その達成度を評価する仕組みを導入します。共通の目標に向かう意識を持つことで、連携が促進されます。
  5. 専門部署の設置または担当者の明確化: グリーンインフラ推進全体を統括・調整する専門部署を設置するか、あるいは各部署に連携窓口となる担当者を明確に定めます。

自治体における部署間連携事例とその効果

実際に部署間連携によってグリーンインフラ推進が進んだ事例は各地に見られます。例えば、ある市では、河川管理者である部署と公園緑地管理者である部署が連携し、河川改修と合わせて河川沿いの遊歩道や親水空間を一体的に整備しました。これにより、治水機能の向上に加え、市民が水辺に親しめる空間が創出され、生物多様性の保全にも寄与しました。従来の縦割りでは別々に計画・実施される可能性があった事業が、連携によって相乗効果を生み出した事例と言えます。

また、別の地域では、農業部門と環境部門、都市計画部門が連携し、放棄された棚田をビオトープとして再生するプロジェクトに取り組みました。これは、農業インフラの再生(農業)、生物多様性の保全(環境)、景観の向上および観光資源化(都市計画・観光)という複数の目的を同時に達成した事例です。部署間で費用や労力を分担し、それぞれの専門知識を持ち寄ることで、単独部署では実現困難な多機能な空間創出が可能となりました。

これらの事例に共通するのは、初期段階から関連部署が協議の場を持ち、共通の目標を設定し、情報や課題を共有しながら事業を進めた点です。部署間の壁を越えた連携は、グリーンインフラが持つ多面的な価値を最大限に引き出し、より効果的かつ効率的な事業推進につながることを示しています。

まとめ

グリーンインフラの推進は、気候変動への適応、生物多様性の保全、地域活性化といった現代社会が抱える喫緊の課題に対応するために極めて重要です。そして、その効果を最大限に発揮するためには、自治体内の部署間連携が不可欠となります。部署間の共通認識の醸成、横断的な推進体制の構築、情報共有の仕組みづくり、共通目標の設定といった具体的なアプローチを通じて連携を強化することが、グリーンインフラによる持続可能な地域づくりを加速させる鍵となります。先進事例に学びつつ、各自治体の状況に応じた最適な連携体制を構築していくことが求められます。